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【経済安全保障 基礎知識編 Vol.3】「OSINT」とは? | FRONTEO 経済安全保障 | 自社開発のAIでビジネスソリューションを提供

作成者: webmaster@fronteo.com|Aug 23, 2022 4:00:00 AM
 

複雑化する世界情勢、規制動向、AIテクノロジーが担う役割を解説する本ブログにおいて、経済安全保障の文脈を読み解く上での重要キーワードを「基礎知識編」として随時紹介していきます。

第3回は経済安全保障に深くかかわりのある「OSINT」について解説します。

いまやインテリジェンス機関のものだけでないOSINT
ロシア軍による侵攻が続くウクライナにおいて、SNSに投稿されている公開動画や商業用の衛星画像が、戦況の解析やディスインフォメーション(偽情報)を検証するエキスパートやジャーナリストたちの重要な情報源となっていることが話題となっています*¹。こういった情報解析はオシント(OSINT:Open Source Intelligence)と呼ばれており、インテリジェンス機関以外の民間組織も、データ解析能力を駆使すれば極めて膨大で複雑な情報網を読み解けるというわけです。そのため、この手法が経済安全保障の文脈において昨今ますます注目を集めています。

OSINTは、「クローズドな内部情報にアクセスせずとも、オープンソースデータのみをベースにした解析によって、企業や官公庁が戦略的判断を下すにあたっての有用な示唆を見出すことができる」ことが特徴です。OSINTがベースとする公開データは、新聞、雑誌などの一般的な活字媒体、SNS、公開企業の財務諸表やIR情報、学術論文、ソースコードが公開されているオープンソース・ソフトウエアなど、多岐にわたります。企業や官公庁においても「宝の山」の発掘作業の成否が、自らの命運を左右する時代になったと言っても過言ではありません。

対象同士の「相関関係を可視化する」ことがOSINTの要
それでは、グローバル環境においてさまざまな業務を執り行う企業・官公庁が迅速にリスクを察知し、変化に対応していくためには、OSINTをどのように活用していけばよいのでしょうか。米中対立、ロシア・ウクライナ問題、人権問題、災害の増加、カーボンニュートラルなど激変する世界情勢に端を発する「バタフライ効果」をマンパワーで読み解くことには限界があります。

オープンソースデータの解析にあたっては、複雑に絡まりあうステークホルダ―同士の「相関関係の可視化」がポイントとなります。以下の3つの分野は、とりわけAIテクノロジーの利用に基づいた戦略的判断が不可欠な領域です。
1. サプライチェーン解析
▼ サプライチェーン上のチョークポイントの把握

  • グローバル経済ネットワークにおけるチョークポイントがどこにあるか?
  • 検討すべき代替先は?

▼ サプライチェーンの安全性と健全性

  • デカップリングの要件を満たせているか?
  • ESGの観点からも人権侵害などと関係がないことを確認できているか?
  • 制裁対象組織とのつながりはないか?

AIテクノロジー活用のイメージ:
競合企業やM&Aの検討先のサプライチェーンについても把握し、戦略的に判断

 
 
 
2.株主支配ネットワーク解析
▼ 隠れた株主支配の様相の把握
  • 競合企業やM&Aの検討先企業の事実上の支配者は誰か?
  • 事実上の支配者はその他どのような企業を支配しているのか?
AIテクノロジー活用のイメージ:
特定企業の実行支配可視化(Power Index)※中国政府の事例
 
 
懸念組織とのつながり
 
 
3.最先端技術・研究者ネットワーク解析
▼ 特定テーマの中心的研究者の研究内容を俯瞰することにより技術トレンドを解析
▼ 研究者同士、研究機関同士のつながりを把握
  • M&A・合弁検討先として適切か?懸念先とのつながりはないか?
  • 競合企業の技術研究動向や研究者とのつながりはどのようなものか?
AIテクノロジー活用のイメージ:
研究機関の論文数や特許数を地図上で俯瞰。制裁リスト企業は赤で表示
 
 
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OSINTは、健全な調達先の確保、BCP、ESG、技術漏洩防止、輸出管理・外為法遵守など、いわゆる「リスク対応=守り」を固める上で欠かせないものになりつつあります。また「守り」だけでなく、M&A、戦略的投資・買収先の健全性の評価、技術開発・提携、オープンイノベーションなど「成長拡大=攻め」の視点でのOSINT活用は、企業や公的機関における戦略的な意思決定においても有効です。