「ウクライナ問題から考えるサプライチェーンリスクとその代替について」既存の調達ルートを見直し、企業価値を高めるチャンスに? <2022年5月20日開催>
2022年6月17日【経済安全保障 基礎知識編 Vol.1】「制裁リスト」とは?
2022年7月15日【オンラインセミナー振り返り】緊急開催!ロシアのウクライナ侵攻を日本企業はどう捉えるべきか?
「経済安全保障法制の重要ポイントと企業が取るべき対応」
ロシア・ウクライナ問題が混迷の一途を辿り、日本においても経済安全保障推進法の行方から目が離せない昨今の状況を鑑み、2022年4月14日(木)にTMI総合法律事務所とFRONTEO が共同オンラインセミナーを緊急開催しました。
TMI総合法律事務所プラクティスグループ所属の白石和泰弁護士、上野一英弁護士、阿部洸三弁護士から、経済安全保障推進法のポイントや企業として対応すべき点について解説を行い、FRONTEO山本麻理取締役からは、経済安全保障への対応に活用できるツールや実際の相談事例を紹介しました。最後に、TMI法律事務所とFRONTEO双方が、企業の経済安全保障対応に際しての留意点をQ&A形式でディスカッションしました。
なお、2022年6月、株主総会の集中日前までに公表されている上場企業の有価証券報告書の中では、経済安全保障について言及するものが昨年と比べると格段に増えています。日本企業及びステークホルダーの高まる関心度に応じて、企業担当者は、引き続き経済安全保障を理解し対応していく必要があります。
経済安全保障に備えることは企業の善管注意義務
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、権威主義国家との国際的合意が抑止力としていかに脆弱であるかが浮き彫りになりました。また、国際連合が機能不全に陥っていること、特に常任理事国が当事者の場合はそれが顕著であることも白日の下に晒されました。権威主義国家による脅威を、日本を含む世界が今そこにある危機として再認識したのが今回のウクライナ侵攻であると白石弁護士は解説しました。
経済安全保障が重要視される背景として、これまで発動されてきた、中国によるエコノミック・ステイトクラフトについても振り返りました。エコノミック・ステイトクラフトとは、経済的手段を使って国益を追求する(相手国に政治的な意思を強制する)ことであり、強い経済依存関係があってこそ、相手国にメッセージを与えるのに十分な打撃をより効果的に与えられます。
2021年6月に改訂版コーポレートガバナンス・コードとともに公表・施行された「投資家と企業の対話ガイドライン」において経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性が言及されたことに留まらず、白石弁護士は「企業に求められる善管注意義務(善良な管理者の注意義務)は、経済安全保障に関する情報収集体制の確立と正しい情報に基づく合理的判断が必要であり、この義務を果たしているかどうか世界中のステークホルダーが注目している」ことを強調しました。言い換えると、経済安全保障に関して手薄であった場合、「役員としてやるべきことをやっていなかった=善管注意義務違反」の烙印を押される可能性がますます高まりつつあるということです。
経済安全保障推進法の制度については、4分野(サプライチェーンの強化、基幹インフラの安全確保、先端技術の官民協力、特許の非公開)それぞれの背景・課題、全体像、法案の解釈、審査制度などについて、上野弁護士と阿部弁護士から解説を行いました。
ロシア政府の広範な影響力は、AIソリューションなくして解析不可能
FRONTEO山本は、なぜAIを使って株主支配ネットワークやサプライチェーンネットワークを読み解く必要があるのかについて、具体的解析を提示しながら紹介しました。
誰がどのような最先端技術(特に機微技術と呼ばれるもの)を持っているのかについては、KIBIT Seizu Analysisでは「オープンソース」を基本として必要なデータを加え独自解析を行っています。そのシステムを使用してGASPROM(ロシアを拠点とするガスパイプラインシステムのオペレーター)のサプライチェーン解析を行うと、下流において、日本およびファイブアイズ諸国におけるガス・石油業界の繋がりが浮き彫りになりました。
ロシア政府がどのような企業に投資をしているかといったような、従来型手法による解析では掬い取れなかった情報も、「実効間接持ち株比率」を用いることでより詳細にあぶりだすことが可能になっています。また、ロシア政府の多段ネットワークにおける影響行使については、アメリカの人工衛星や日本の電子部品ビジネスにおいてその支配力が伝搬している様子を経路図で紹介しました(以下のイメージ図参照)。セミナー内で提示した「ロシア政府による株主支配ネットワーク業種別TOP30」などは、特に日本企業の方々の関心が高いかもしれません。
社外アドバイザー間・社内の部門間における垣根を取り払った体制作りを目指す
セミナー後半のパネルディスカッションでは、以下のような質問に対して、法律・テクノロジーの観点で備えるべきポイントを解説しました。
- 今回のロシアによるウクライナ侵攻は、経済安全保障体制を構築していくにあたり、どのような影響を与えることになるのか?
- 経済安全保障に関連して具体的にどういった相談が企業から届いているか?
- 経済安全保障推進法は、企業において対応しなければならない点があることは理解できたが、逆に企業としてメリットとなる側面もあるのか?
- 経済安全保障推進法を含む経済安全保障政策は、事業リスクに直結する問題でもあり、政策の内容や方向性に関して、企業が政府に対して自社の意見を述べたいといった場面も増えてくると思うが、そのような場合、企業としてどのような働きかけの方法が考えられるか?
- FRONTEOのAIエンジン「KIBIT」を用いた経済安全保障関連サービスの内容及び具体的な活用方法は?
各々の質問を題材としてディスカッションする中で、日頃企業からさまざまな相談を受けているTMI総合法律事務所とFRONTEO双方に共通して、以下のような見解が得られました。
- 経済安全保障への対応が欠かせない時代において、これを「危機」としてとらえるべきではなく、「有事に強くなるチャンス」としてとらえることが重要。
- 企業における法制度への対応、官公庁や議員への働きかけ、サプライチェーンの解析を、特定のアドバイザーが丸ごと支援することは不可能。法律の専門家、テクノロジーの専門家双方が垣根を作らず支援していくことが望ましい。
- 企業内においても、経済安全保障対応においても部門間の垣根を作らず、社長・役員クラスがリードして会社全体を横ぐしで見る体制づくりを進めていくことが重要。
FRONTEOの経済安全保障ソリューションは先端技術の動向やサプライチェーン等を解析することで企業を取り巻く状況を可視化し、お客様の最適な経営戦略策定をサポートします。
AIを活用した経済安全保障ソリューションにご興味がある方はこちらまでお問い合わせください。
また、経済安全保障にまつわる様々な分野で活躍する専門家を招いて、定期的に勉強会を開催しています。サプライチェーン解析や株主ネットワーク解析、人脈ネットワーク/最先端技術解析から何が見えてくるか、そして見えてきたことを自社の経営戦略にどう生かしていくかについて興味がある方はぜひFRONTEOの経済安全保障勉強会にご参加ください。