「ウクライナ問題から考えるサプライチェーンリスクとその代替について」既存の調達ルートを見直し、企業価値を高めるチャンスに? <2022年5月20日開催>
2022年6月17日ロシア・ウクライナ問題が経済安全保障推進法案の衆議院通過を後押し
2022年5月11日に参議院本会議で「経済安全保障推進法案」が可決され、2023年度から段階的に施行されることとなりました。法案は ①サプライチェーンの国内構築強化、②基幹インフラの安全確保、③先端技術の官民研究、④特許の非公開の4本柱で構成されています。激しい米中対立を踏まえての対応ですが、足許ではこれに加え、ロシア・ウクライナ問題による経済制裁の影響を考えなければいけません。ロシアのウクライナ侵攻によってサイバー攻撃や資源の調達環境の不安定化など懸念が次々に浮上しており、こうした危機感が法案を後押しした側面があります*¹。
特定業界への影響に留まらないロシア・ウクライナ問題
ロシア・ウクライナ問題に関する影響としては、一般的に以下のようなものを想定する企業が多いのではないでしょうか。
・ロシアの金融措置をはじめとした経済制裁の影響
・ロシア・ウクライナのサプライチェーン上の影響度合い
あるいは、影響が大きいEUに事業展開している企業や特定の業界(エネルギー業界等)でなければ直接の関係はないと考える企業もあるかもしれません。
しかし現在のロシア・中国政府のスタンスを鑑みると、多くの企業にとってこの問題は「対岸の火事」ではありません。以前と変わらず、中露は、さらなる民主主義・透明性・説明責任を求めている西側先進国の影響力が弱まることを望んでおり、引き続き同じ土俵に立っているといえるでしょう*²。ロシア、中国のような権威主義国家と西側の自由民主主義陣営のデカップリングの進行、規制強化の可能性については当然引き続き視野に入れるべきです。各企業は、対中国を前提としていた2021年時点から、さらに大幅にアップデートした戦略的な経営方針の策定やリスク対策を考えておく必要があります。
ロシアの大企業と日本企業間の見逃せない繋がり
ロシア・ウクライナ問題が日本企業にどういった影響を与えるかを読み解く一つの素材として、FRONTEOのAIソリューションKIBIT Seizu Analysis(キビットセイズアナリシス)の解析技術を用いて、天然ガスの生産・供給で世界最大のロシア企業であるGASPROMのサプライチェーンを調査してみました (図)。
以下のデータによると、GASPROMの3次までのパスが繋がっている企業数の国別ランキングで、ロシア・中国とロシアが発表した非友好国で20か国中14か国が入っていることが判ります。ここから、ロシア・中国と日米欧とのデカップリングにおける影響が大きいことが容易に推察されます。
GASPROMから3次までのパスで繋がっている企業数
※ガス・石油業界の繋がり国別TOP20
また、上記同様当社のAIソリューションKIBIT Seizu Analysissを使って株主支配ネットワーク解析を行った結果、ロシア政府が実効支配している国の企業数ランキングでは、トップ10か国中5か国がロシアが発表した非友好国であるという事実も判明しています。日本企業にこの影響が及ぶことは避けられないでしょう。
・自社・提携先・合弁先の調達リスク チョークポイントとなっている企業はどこか?
・人権やESGの観点で抜け漏れはないか?
・戦略的なサプライチェーン強化にあたり、ニュースで報道されている世界情勢の「その先」は?
*¹2022年5月10日 ロイター通信「経済安保法案、参院委可決」
*²2022年4月15日 JBpress「『中露の結束は強固に、臆している間は西側にない』英国下院国防委員長が警鐘」